介護離職の現状と国の施策

介護離職とは、家族を介護するために仕事を辞めてしまうことをいい、近年では社会問題としてメディアでも取り上げられることが少なくない。
その中には「自分も定年前だし介護に専念しよう」ということもあるかもしれないが、いま問題視されているのは「仕事と介護の両立が難しい」という動機での離職が、少なくなところにある。
そこで、仕事を辞めた後どうなったのか、現在の傾向、対策方法など、介護離職の現在について考えてみたい。

介護離職者は増加している

超高齢化社会が進む昨今、介護離職は増加傾向にある。
厚生労働省「雇用動向調査」によると、2007年に介護離職者その数およそ5万人だったものが、2017年には9万人を超え、2倍近く増加したことが分かっている。また、総務省調べによれば、2012年の介護している者の総数は627万6千人おり、うち55%にあたる346万3千人が働きながら介護しているということも分かった。このとき主な介護者が、40~50歳代のとりわけ働き盛り世代であり、企業の中核を担う労働者であることが多いことが分かっている。このことは、働き世代である40~50歳代に介護離職の危険性が内包されていると見て間違いない。
また、一週間あたり介護する日数は男女で大きく異なり、女性は「週に6日以上」が30.7%と最も高く、次いで「月に3日以内」(25.1%)、男性なら「月に3日以内」が32.5%と最も高く、次いで「週に1日」(22.6%)、「週に6日以上」(20.3%)となっている。
9万人を超える働くことができる者が、「介護離職」という理由で労働市場から離脱することは、経済的にも社会的にも大きな損失であることは言うまでもないだろう。

介護離職その後

離職することによって、介護の負担を減らすことが目的なのにも関わらず、離職後、介護の負担がむしろ増したと回答する者が多いことが分かった。このうち「非常に負担が増した」31.6%、「負担が増した」33.3%と、合わせると64.9%にものぼり、どういった負担が増したかについてのアンケートでは「精神的な負担が増した」64.9%、「肉体的負担が増した」56.6%、「経済的負担が増した」と74.9%となっていて、離職による負担減についての効果ははなはだ疑問であると言わざるをえない。
離職後の再就職については、離職前と同様に、正社員として採用された者がおよそ5割、派遣社員やパートまで含めると67.5%となっている。

介護離職ゼロ

2015年安倍晋三内閣が「一億総活躍社会」を提唱し、少子高齢化対策として、子育て支援や経済施策、社会保障制度の見直しなどが行われた。社会保障の見直しの中では「介護離職ゼロ」を目標として掲げられていて、従来の施策も含めれば、多くの制度を利用することができるということを、知らないでままの者も少なくない。

介護休業制度
通算93日、年3回と、まとめて休みを取ることが認められている。対象家族は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。当制度とは別に「介護休暇制度」もあり、通院や買い物など、スポットでの休暇取得も可能で、1年に10日取得することができる。
これらは「育児・介護休業法」で定められているので、事業主はこの申し出を断ることはできない。

介護休業給付金
雇用保険の被保険者で一定の条件を満たす者が、職場復帰を前提として家族を介護するために介護休業を取得した場合に支給される給付金のことである。複数回の支給も認められており、勤務先のハローワークに申請窓口が用意されている。細かい取り決めについては厚生労働省でQ&Aが公開されているので、そちらを参考してもらいたい。(Q&A~介護休業給付~


「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」参照

介護離職を防ぐために

介護離職を考える前に「離職によって財政的基盤を失うことになるが備えはあるか?」「本当に仕事を辞める必要があるのか?」「親類や配偶者など協力者はいないか?」について、いま一度考えてほしい。
国の施策では財政的支援の比重が高い。逆をいえば、金銭で解決できる福祉サービスがあれば、その制度を活用することを考えても良いのかもしれない。離職後の再就職についても3割以上が叶うことがなく、年金生活や生活保護といったケースも考慮する必要があるので、既に貯えがある、安定収入が保証されているなどの理由がなければ、離職について一旦立ち止まってほしい。

前述したように介護離職ゼロのための施策はあるものの、働きながら介護する者の9割は制度活用していないという現状もある。また、介護休業のみならず、介護休暇を含めて考えたとしても、100人以下の中小企業にいたっては、活用度が5%にも満たない。

厚生労働省では「家族の介護を抱えている労働者が仕事と介護を両立できる社会の実現を目指」すとし、その周知にも心掛けている。
仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~

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