老後という期間~ADL・IADL・QOL~

老後

いわく、人生100年時代が始まろうとしている。
平均寿命の延びとともに「老後」の期間は必然と長くなっていく。そして、老後という考え方も、時代や個人によって捉え方が変わるだろう。福祉的視点ならば、老齢年金の受給を始めると老後。精神的視点ならば、仕事を引退すると老後。
人によって違いがあるとするならば、「老後をスタートする」と決めたときからが、老後生活の始まりなのかもしれない。

日常生活動作 (ADL)

老後の生活が始まったとき、健康で身の回りのことが自分で出来る時期もあれば、日常生活に何らかの手助け、介護などを必要とする時期が来るかもしれない。

ADL(Activities of Daily Living)とは、介護・福祉の業界で使われる言葉であり、通常「日常生活動作」を意味している。食事、着替え、入浴、歩行、排泄など、日常生活をする上で欠かすことができない動作を意味する。
近年の定義では、ADLとは別に、金銭・薬などの自己管理、買い物や電話といった他者とのコミュニケーションをはかる行動や、ほかに料理といった順序立てた行動などについては、
IADL (Instrumental Activities of Daily Living) として、区別する考え方が多数派のようだ。というのも、日常生活する上での動作に支障がなくとも、認知症を患った場合であれば、IADL分野において、介護を必要とするケースも考えなくてはならないので、ADL IADL という二つの区分が必要とされている。
IADLの評価については、その判断が困難なケースも少なくない。社団法人日本老年医学会によると、評価方法は13の項目からなり、手段的ADL(交通機関での外出、買い物、食事の準備、請求書の支払いなど)、知的能動性(書類を書く、新聞を読む、本・雑誌を読むなど)、社会的役割(友人への訪問、家族や友人からの相談、病人のお見舞いなど)があるとされている。
IADLの評価法 | 高齢者診療におけるお役立ちツール | 社団法人 日本老年医学会

生活の質 (QOL)

QOL (Quality Of Life) とは、日本でも1970年ごろから提唱されている考え方で、「生活の質」と訳されている。
WHO(世界保健機関)によると「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と、定義されている。評価方法として「身体的領域」「心理的領域」「自立のレベル」「社会的関係」「生活環境」「精神性/宗教/信念」に分けており、その各領域ごとで更に細分化した設問をし、その合計点を評価するとのことだ。

QOLという言葉は、医療業界でも頻繁に使われているが、少し意味合いが異なってくる。本来的な意味ならば、同じ目標に向かっているといって構わないかもしれないが、そのプロセスが異なっているといっていい。
緩和ケア(ターミナルケアや終末期医療ともいわれる)では、末期がんなど根治寛解を期待することができず、治療を目的としない医療を行う医科のことをいう。それらの現場では QOL が頻繁に使われるのである。末期がん患者であれば、無痛治療といった痛みを無くす治療であったり、抗がん剤でがん細胞の増殖を抑制し、患者が常に入院している状況を回避することで、家族と共に過ごす時間を増やしたりする医療が行われる。緩和ケアにおけるQOLの向上とは、「残された時間をできるだけ長く充実したものに」という考え方を意味するのである。

現代医学は遺伝子の領域に達した。人の遺伝子配列は、2003年ヒトゲノム化計画によって、詳細が明らかとされているとのこと。しかし明らかとなったことといえば「現代医学では治療不可能」という悲しい事実だった。遺伝子医学とは、単に「根治療法はない」と告げるだけの、悲劇の技術だったのだろうか?それはこれからの医学の進歩にかかっているが、いまだヒトはがんを克服していない。

老後、QOLとADL

QOL と ADL は、密接に関係している。
体が思うように動かない、他人と接する機会が少ない、持病もしくは体調が思わしくない。程度の差こそあれ、歳を経るごとに誰しも感じるストレスだろう。ストレスを感じればQOLが降下することは必然ともいえる。
しかし、逆のアプローチをした場合にどうなるだろう。つまり、ADLを向上させることで、QOLは向上させることができるかという疑問について。これについてはすでに研究がされていて、結論からいうとADLを向上させたとして、必ずしもQOLが向上するとは限らない、という論文が発表されている。
仮にADLが低く、日常の動作に何かしら支障があったとしても、自己を満足させること、幸福を追求することは可能なのだということを忘れてはならない。近年では、リハビリテーションによってADLの向上させることより、QOLそのものを向上させることを重要視する考え方に変化してきているそうだ。
もちろんADLの向上で解消できるストレスも多くあるに違いないが、リターンに見合わないリハビリや外科的療法に頼る必要はない、ということが重要なのだということ。

仕事から解放されたとき、老齢年金の受給を開始したとき、あるいは老人ホームなどの施設に入ったとき、以降の幸福追求権は自身にある。そのとき迷わないためにも、家族のこと、お金のこと、健康のこと、やりたいこと、それら準備を始める際に、自身の幸福がどこにあるのか、見つめ直してみるのもいいかもしれない。

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