健康な暮らしを考える~住宅断熱について~

断熱材

快適で健康的な暮らしを実現するためにはどうするべきなのか。
多種多様な方法があるだろうし、効果もさまざまだろうが、ここでは断熱による健康寿命について考えたい。

厚生労働省による「人口動態統計(2015年)」では、1年間で家庭内で発生した不慮の事故死は1万3952人にものぼる。そしてなんとこの数字、交通事故死5,646人の2倍以上となっているである。
家庭内事故で最も多いのが「溺死」、その多くが真冬の入浴中に発生しており、うち9割が65歳以上となっている。
なぜここでこんな話をするかというと、入浴中の不慮の事故と、断熱との間には、大きな因果関係があるとされているからだ。

ヒートショック

結論からいうと、断熱が不十分な住宅の場合、高齢者の方は不慮の事故に遭いやすいといっていい。

  1. 暖かい部屋から冷え切った風呂場へ移動する
  2. 身体が体温を奪われないために、血管の収縮・血圧の上昇
  3. 寒いのでいきなりお湯につかる
  4. 血管の膨張・血圧の下降

機序としてはこのように説明することができる。暖かい所から寒い所に移動することで、短時間で急激な血圧の変動が生じ、結果として心臓や血管に負担をかけることとなってしまい、心筋梗塞や脳卒中のリスクが跳ね上がるというものだ。

このような現象は「ヒートショック」と呼ばれ、近年では心臓病の方や高血圧の方に注意喚起されることも多く、ご存知の方も多いだろう。ヒートショックから身を守るという意味で、断熱効果を高めることはもちろん有用であるし、更には普段から身体を労わることができるようにもなるのだ。

断熱等性能等級

断熱レベルを測る基準として、断熱等性能等級なるものがある。
国土交通省が、断熱性を評価するために定めた基準であり、次のように規定されている。

この性能表示事項において評価すべきものは、評価対象住戸における外皮平均熱貫流率及び冷房期の平均日射熱取得率の小ささ並びに壁体内等の結露の発生を防止するために必要な対策の程度とする。

評価方法基準|国土交通省

住まいにおける熱の移動は、外壁、または窓や玄関などといった開放部からがほとんどだ。
それらの箇所から、冬なら室内の暖気が放熱されない、夏であれば外気温の影響を受けない、それでいてかつ、外壁の内部で結露が発生しないこと、これらの点を評価対象としている。

さらに平成25年の制度見直しでは、それら断熱性能に加えて、冷暖房、換気、給湯、照明設備の性能など省エネ効果を加味した基準もあるが、原則的には断熱等級4(G-4)が基準となり、様々なルールが策定されている。

また、寒冷地・温暖地によって、断熱基準が異なることにも注意しなくてはならない。原則的に北海道以外の場所で住宅を購入する場合、そのほとんどが断熱等級4(G-4)ということになる。
断熱等級5(G-5)とは寒冷地仕様の断熱性能相当の断熱効果を見込んだ性能を有しており、北海道以外の土地では、注文住宅で断熱材について要望でもしない限り、断熱等級5(G-5)とはならないのだ。

住宅と健康

近畿大学の研究によると、断熱等級G-3~G-5の住宅へ引っ越しをした後の、健康に関する追跡調査を行ったところ、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、関節炎、アレルギー性鼻炎など15の諸症状について、その大半に明らかな症状の改善が見られたことが分かったと報告された。しかも、断熱性能が高ければ高いほどその傾向は顕著となり、G-4よりもG-5の方がより有意な差が見られたという。
各疾患の改善率と転居した住宅の断熱性能との関係
住まいの機密性を高めることで、気管支ぜんそく・鼻炎などの症状が改善されることは推測できる。冷え性や関節炎についても、断熱効果による血行促進ということで説明がつくだろう。ここではアトピー性皮膚炎にも一定の効果が見られたとのことだが、室温が保たれることで着用する衣類が減り、結果的に皮膚への刺激を抑制することができたことが、大きな要因ではないかと考えられている。

また、健康的な住宅について考えるならば、シックハウス対策も忘れてはならない。2003年に施行された改正建築基準法において、すでに対策は万全とされているし、個別の対応策として、シックハウス対策スプレーなど関連商品も多い。

住宅を購入する層の多くは、省エネ性能を重視し、そのためにコストアップすることも仕方ないと考えているという。しかしその意識は、太陽光発電などの、環境や家計に直結するようなメリットがある設備に偏っているという。本当は断熱効果がもたらす節電効果も大いに環境や家計に効果をもたらすものではあるが、そのような認知度が高まっているとは言いがたいのが現状だ。
太陽光発電などの循環エネルギーや省エネはもちろん大切だが、人生100年時代が叫ばれる昨今、健康寿命を健やかに永く謳歌するために、住宅のあり方について、もっと私たちは考えなくてはならないのかもしれない。

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