アウトカム方式-介護サービスの効果測定とインセンティブ

介護報酬

介護保険制度が抱えるジレンマ

既存の保険制度で考えた場合、要介護度が上がれば、介護保険料の負担額が増加するのは当然のことだ。また介護事業者の介護報酬は、提供するサービスへの対価とということになるのだが、つまるところ要介護度が上がれば、介護保険の負担額が増え、更に事業者の介護報酬も増額されるという図式が成立することになる。
この一連のスキームに、大きな間違いがあるとは思えないが、利用者のために、QOL(生活の質)、ADL(日常生活動作)を向上させる介護サービスを実施、そして改善の効果が見られた場合、その効果に応じて要介護度が下がり、介護保険による負担も減少するが、結果として、効果的な介護サービスを実施した事業者の報酬が減ってしまうのである。
社会福祉制度を功利主義だけで考えることは難しい。とはいえ、利用者に喜ばれ、社会福祉に貢献すればするほど、事業者の介護報酬が減額されてしまうという、介護保険制度のジレンマについては、以前から指摘されていたことでもある。国の補助や事業者のモラルによって守られてきた一面もあるが、ここにきて小規模事業者の閉鎖、給与体制など、看過できない問題が表面化してきたのも事実だ。

介護サービスの効果測定と、介護報酬の成果報酬

未曽有の高齢化社会を目前に控え、業界は今後の対応策に取り組まねばならない。古いシステムが現在の環境とマッチしないことなど、しばしば起きることなのである。このジレンマを解決するため、厚生労働省が新しいルールを発表した。
それが、要介護者に対する介護サービスの効果測定を実施し、効果に応じた成果報酬を事業者に給付するというものである。
つまり、要介護度を下げることができる介護サービスを実施した事業者には、その効果に応じたインセンティブが介護保険料から支払われるのだ。確かにこの方法なら「社会福祉に貢献=介護報酬の減額」というジレンマを解決できる可能性が高い。
リハビリ

アウトカム評価

これを踏まえ、2018年、アウトカム評価というルールが導入されることに決まった。アウトカムとは、成果と結果を意味し、今回のケースであれば、ADL(日常生活動作)レベルを向上させることが出来ると、その効果に応じた報酬を得ることが可能となるものだ。
ADLレベルは「Barthel Index(バーセルインデックス)」という指標を用いて評価するが、評価と言っても一様に述べることではできない。一人一人リハビリの内容、その効果も異なるので当然ともいえる。
厚生労働省は、介護事業者から任意でデータを収集し、食事・排泄・起床など、様々な項目を網羅的にデータベース化することで、どんなサービスが効果的だったか、因果関係、その機序など検証する構えだ。

アウトカム評価を分かりやすく

例えば要介護者Aは、家族の庇護にあったが、自力で歩くのが困難で、外出する機会も少なく、食事も細くなった、更には食事の介助も必要で、要介護3とされていた。家族の負担が増え手に余ってきたため、役所で相談したところ、居宅介護を薦められ家族はそれに同意、居宅介護サービスの開始が決まった。
担当者による調査の結果、歩行器と専門家によるリハビリが、ケアプランに盛り込まれることになった。
するとどうだろう。要介護者Aはリハビリのため外出の機会が増え、結果日常生活に不具合のない程度に、体全体の筋力も着実に回復してきた。相乗効果で食欲も取り戻し、更には食事も自分で摂ることが出来るようになったのだ。
それから半年後、次回認定ではなんと、要介護3から1へと大きく改善することができたのである。
要介護者Aにとって、ADLの向上はもちろんだが、要介護1になったことで介護保険料の支給額も削減することができた。従来の介護保険制度であれば、以降事業者の収入が減少したケースであったが、実施した介護サービスについて、厚労省による調査の結果、ADLの向上とリハビリの機序を説明することができた、もしくは統計的に証明することができたため、実施した事業所は成果報酬を得ることと相成った。

成果報酬型の介護サービスのゆくえ

この改定で、報酬額の内容にもよるだろうが、短期的には介護保険の負担額は増加すると考えられている。しかし、サービス品質が向上し、介護事業者の増収は、業界が抱える深刻な人材不足の解消へと繋がり、更に効果の見られない介護サービスも淘汰されていくことで、無駄な介護保険料も支払われなくなる。中長期的に業界全体で考えると、介護保険による負担額を減らすことが出来ると考えられている。

来年度から取得したい事業所は、今年の12月15日までに届け出る必要があると、介護保険最新情報のVol.648で周知を呼びかけている。

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